計画を作るうえで、検討してもわからない数字のとっかかりでもあればいいのに。
などと思った事はありませんか?
そういった思考力を育むのがフェルミ推定の考え方。
仮定を駆使することによって、物事を筋道立てて考えていく思考力を身に付けましょう。
フェルミ推定とは
フェルミ推定は物理学者のエンリコ・フェルミに由来する、とても試算できない様な内容に対する概算を出すこと、推定すること。
通常知られていない様な統計や、取られていない様な総数など、そういった事を想定する際に用いられます。
フェルミ推定の例題としては、下記のようなものが挙げられます。
- シカゴのピアノ調律師の人数は?
- 日本に存在するマンホールの数は?
- 日本依存在する電柱の数は?
- 世界中に存在するアリの数は?
など、一見して専用の資料もない、簡単には推定もできないような、突拍子もない問いに使われます。
目標設定に関して、特に途方もない目標を設定する際に、どういった物を仮定していけば目標が具体的になるかなど、最終系の仮定とそこに至るまでの過程を形成する一助になります。
シカゴのピアノ調律師の例
シカゴのピアノ調律師の例題は、実際にフェルミがシカゴ大学の学生相手に出したとされる有名な問題です。
ピアノ調律師の人数という、通常まったくわからない数値に対して、データを仮定していき数字をそれっぽく組み立てていきます
・シカゴの人口を設定、これを仮に300万人とする。
・1世帯当たりの平均人数を設定、仮に3人とする。
・世帯数に対してピアノの所有率を借り当てする1/10。
・ピアノの調律周期を1年に1回と設定する
・調律師の1日の調律数を3台と設定する
・調律師の年間仕事日数を250日と設定する
これをそれぞれ計算すると
・シカゴのピアノを有すす世帯数はおそらく10万世帯つまり10万個である。
・調律師の年間の調律台数は750台である。
・10万を750で割ると133.33、およそ133人であることがわかる。
もちろん数値がすべて過程であるため、実際の調律師の人数が133人であるとは限りませんし、細かく言うと学校や音楽教室。
楽団の分まで保有台数が増えるでしょう。
それらの仮の値をひっくるめて、おおよそこれくらいではないかというのがフェルミ推定なのです。
地球上のアリの個体数
では少し戻ってアリの個体数を考えてみることにしましょう。
これを考えるのには少し情報を付け足します
前提:全人類の総重量と、アリの総重量は同じである。
仮説
- 人類の平均体重は60㎏である
- 正解人口は70億人である
- アリの平均体重は0.004gである。
計算
- 人類の総重量は4200億kgである
- 4200億kgを0.004gで割る。
- 超いっぱい(ディスガイア風)。
- 105000000000000000匹かな……多分。
完全なフェルミ推定のプロセスではありませんが、地球上のアリの個体数はこんな感じです。
本来は人類の総重量=アリの総重量という前提条件を与えてはいけないのですが、まぁ例題ということで。
フェルミ推定をどのような場面で生かすか
フェルミ推定の様な概算はどの場面で効果を発揮するでしょうか。
これらを駆使する場合、数字はすべて過程でしかありません。
例えば、新商品の購買層を考える場合どの程度売れそうかなどとりあえずの検討をつけなければいけません。
- 女性向け商品である
- ターゲットは幅広く10代から50代まで
- おそらく1000人に1人は買う
- 1月に1回の消耗品である
としましょう。
国内の女性の人数は凡そ6000万人でしょうか。
日本は高齢化社会が進んでいるので、ターゲット層はその半分として3000万人。
1000人に1人が購入するので、3万件。
継続して月一回の購入で使う物なので年間での売り上げは12倍して36万件。
つまり、この商品の年間売り上げは、36万件×売価であると推定できます。
もちろんあくまですべて仮設なので、1万人に1人しか購入してくれないかも知れませんし。
みんなケチって2ヶ月に一回しか再購入してくれないかも知れません。
しかし、最初の売り上げ予測とはこうしたものなのです。
ターゲット年齢の女性が何人かというのは、人口推計を見れば正しいデータを知ることはできます。
これまでの販売商品から、どの程度の商品リーチを行えば売れるかはある程度予測がつくはずです。
フェルミ推定とはこうした正確な前提データが無い場合の予測を行うための思考パズルなのです
推定値が当たっていることよりも、どういった仮定を経て導き出した答えなのか。
そういったシンプルな思考力を真に問われているのです
Googleの採用試験で一躍有名に
かつでGoogleの試験ではフェルミ推定を基にした問題が出題され、エントリー者の能力を図る一つの指標としていました。
そうした背景があり「あのGoogleが採用する試験ならば、これで答えを示せる人間は優秀に違いない」ということで、意識高い系企業がこぞって採用を始めました。
しかし、そうした試験方式は突然終わりを迎えます。
「え、なぜ?」
と思うかもしれません。
これは試験を採用してきたGoogle自身が明言していますが、この手のクイズ的問答では、その人間の能力は測れない。
今後はフェルミ推定を通じた問題を採用試験には出さない。
そう明言したのです。
フェルミ推定は素早く仮説を立て、その結論を導き出すのが目的な為に優秀な人間の選別になるだろうと期待されていました。
しかし、ついにそうした有効性を示すには至らなかったのです。
とはいえ、有用性が全くないというわけではなく、プロセスに必要な数値はどんなものであるか、を瞬時に考え出せる思考力は常に必要です。
Googleが試験に使わないといったから、忘れてもイイや!
ではなく、しっかりとそうした考え方があるというのを身に着けていきましょう。
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